パターンレビュー:”Gus The Labrador Puppy” by Stuff The Body

海外インディーズデザイナーさんたちのパターンを実際に編んでみてレビューするコーナーを始めます。

記念すべき(?)1回目はチェコのデザイナーさん、Stuff The BodyのNataliaさんのパターン。「Gus The Labrador Puppy」です。

Nataliaさんのパターンは、耳から足からしっぽから、とにかく全部を力技で一気編みする(パーツごとに縫い合わせない)のが特徴。
SNSでよくシェアされているのは、この鹿の親子とか。

このウサギさんとか。

ここ1、2年はもう新しいパターンを発表されていませんが、ショップは営業中です。

Nataliaさんが一気編みのパターンばかり作るのは、ご本人曰く「縫うのが嫌い」だからだそうですが、縫い合わせる工程が少ないと、作る人によってパーツの位置に差が出にくいので、再現性が高いパターンになるのがいいところです。

ただ、Etsyショップのレビューをチラチラと眺めていたら、「編んでいるうちに左に曲がってしまう」というコメントがいくつかついていました。おそらく、Nataliaさんよりも編み手がきつい人が編むと曲がっちゃうのかな?という印象。わたしはそうとう手がきついので、これはためしてみると面白いかもしれないな?!と思いましてチャレンジです。

改めて選んだのは「Gus The Labrador Puppy」です。EtsyとRavelryからPDFを購入できます。
Etsy: https://www.etsy.com/listing/188673367/
Ravelry: http://www.ravelry.com/patterns/library/gus-the-labrador-puppy

これ、実は数年前にパターン自体は購入しておりまして。足の指がしっかり編みで表現されているのが面白いなと思っていて、そのうち編もうと思いながら放置しちゃってました。久しぶりにPDFファイルを引っ張り出してきました。

まずは総合評価から。

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総合オススメ度 ★★★☆☆

(黒星が多いほどオススメ度が上がります)

難易度 ★★★★☆

(黒星が多いほど難易度が上がります)

ユニバーサルさ

ユニバーサルさでは以下3つのポイントがあります。
・英語が読めないとわかりにくい
・手のきつさゆるさで出来上がりに大幅な違いが出る
・推奨糸が日本で入手しづらい

・英語が読めないとわかりにくい
たとえ言語がわからなくても、英文パターンのみ、編み図のみを見れば編めるパターンっていうのがユニバーサルさとしては理想だと思っています。このパターンは図解と写真も豊富なので、英語の解説文を全く読まなくても編めないことはない、とは思うのですが、たぶん「これあってるのかな?」って思いながら編み進めることになりそう。そういう意味で、マイナスポイントです。

・手のきつさゆるさで出来上がりに大幅な違いが出る
下にわたしが編んでいた時の実況をちょこっとご紹介しようと思っているのですが、このパターン、「手がきつくてかつ右に斜行しにくい」という奇跡的な編み手の人でないと、どうしても歪んでしまいます。

その原因は分散増し目の少なさと、力技の増減目に由来するものです。分散増し目が少ないのでどうしても右にズレていっちゃうし、一気に6回連続で減らし目をしたりするので、手がきつい人でないと目がゆるくなったり、穴ぼこがポコポコ開いちゃったりするはずです。

・推奨糸が日本で入手しづらい
Nataliaさんは、どのあみぐるみも「yarn art」というトルコのメーカーの「jeans」という糸を使用しています。
http://www.ravelry.com/yarns/library/yarnart-jeans
これ、アクリルとコットンが半々くらいの割合になっている中細糸のようです。わたしも実物を見たことはないんですが、アクリルコットン混って編みやすいんですよねえ。ただ、トルコの糸ということもあって、日本の毛糸屋さんではまず売っていません。amazon.comなどでは日本への発送もあるので、頑張れば入手できなくもないですが、ちょっとマイナスポイント。

ただ、ウールやアクリルなどで編めないわけじゃないです。今回私はアクリル糸で編みました。ただ、見本のような質感はコットンならではのものなので、ああいう柔らかい雰囲気を出したいなーと思うなら、糸選びがちょっとポイントになりそう。

個人的には、DMCのナチュラなどは、かなり似た質感になるのではないかなと思っています。こちらもすとすととしていてとても編みやすい糸ですしね。

(大変恐縮ながら画像はアフィリエイトです)

総合評価高くない?
と、色々と難点をあげつらった割に総合オススメ度高くない?と思われるでしょうか。

だってカワイイ

いやーーなんといってもカワイイんですよねこのパターン。ここのおてての感じとか。


この眠そうな顔とか。

頭がでかくて足が太いって、いかにもレトリーバーのこどもっていう感じです。パタパタ走り回っていたかと思うと気づいたら寝てるみたいな。この愛らしさがまず星いっこ増やしちゃう感じ。

販売可能
ついでオススメ度を上げちゃう理由が、完成作品が販売可能だというところ。海外のパターンだと珍しくはないですが、Nataliaさんのパターンもすべて、完成作品を販売することができます。まだまだオリジナル作品は多くないけれど、腕試しでイベント販売などにチャレンジしてみたい!そんなハンドメイダーさんにはとってもおすすめ(ちなみにpiggiesagogoのパターンも、作品販売可能ですよ!)

押さえておきたいポイント
・magic ring
普通のわと巻き方を逆にすることで、ぎゅっとむすばってほどけにくくなるわの作り目です。
下の動画、解説は英語ですが、映像だけでやり方はわかるはず。

・()*数字
()の中を*回繰り返す、という記号です。
(sc 1, inc)*2なら、細編み、2目増し目を2回繰り返す、という意味になります。

・invisible dec
2目の減らし目は「invisible decrease」推奨です。こちらも解説は英語ですが、映像だけでやり方はわかるはず。

そのほかポイントを箇条書きで
・全ての糸端はながーく残しておく(とじはぎに使います)
・立ち上がりはつけず、グルグル編むので段数マーカーは必須
・目は表になっていないけれど、写真と図を見れば英語読めなくても編める(パーツ同士をつないだり、段から目を拾ったりするのは英語が読めた方が安心)
・シンプルな耳から始まるので、英文パターンに慣れやすい

それでは編んでいきます
さきほどNataliaさんのパターンは一気編みが多い、と書きましたが、このパターンは比較的縫い合わせる工程が多いです。パターンに書かれている順番通り編んでいきましょう。

まずは耳から。あとで頭に縫い付けるパーツです。

耳に続いて目、鼻、とバラバラに編んでいきます。

書き忘れていましたが、パターンは英文です。日本のように編み図ではなく、文章と略語で編み方が書かれています。
例えば「1段目:細編み6目」なら、「Rnd1: sc 6」みたいになります。Gusの耳や目などは比較的単純なパーツなので、英文パターンに初挑戦するという方にもチャレンジしやすいかもしれません。

続いて頭を編んでいきます。ポソポソと飛びでている糸は、耳鼻目を後からつけるための目印です。パターン中に指示があるので、その場所に印をつけていきます。この印つけ始めた時点で、嫌な予感はしてたんですよね…

この写真の右手側が、犬のマズルになります。もうすでに右に斜行しはじめているのがわかるでしょうか?

頭のてっぺんから編みはじめて、犬の肩のあたりまで編んだところ。上から撮っています。
こう、なんというか、犬さんが左向いちゃってます。

お腹から上がほとんど編めたところ。ここにきて、段から拾う目があることが発覚!
かなり丁寧な図解がされているので、英語がある程度読めて、セーターなどの「〜の間から◎目拾う」みたいな拾い目をしたことのある方ならたぶん問題なく編めるレベルではありますが、英文パターンであみぐるみをはじめて編む人にはちょっとオススメできないかもしれません。

とりあえず尻尾と頭(ひっぽとあぱま!)に綿を詰めてみました。さきほど付けていたパーツ縫い付け用ガイド、随分左右で歪んでいるのがわかりますでしょうか。

どーん。頭部のセンターラインにまち針を打ってみたところ、ひっじょーに曲がっているのがよくわかります。ガイドは全部で6箇所。本来であれば左右対称で、上から耳、目、鼻がつく場所になる・・・はずでした。このままパーツをつけちゃうと福笑いみたいになっちゃいます。残念。

ただ、形自体はキレイに編めているので、このまま進めちゃいましょう。編み終わった後にバランス見ながらパーツをつければ、そこまで大変なことにはならない…はず。

脚は4本ばらばらに編み、部分的にとじて部分的に目を拾って編んでいきます。編み終わりの形に合わせて並べてみたところ、後ろ足が右向いちゃいました。

が、なんと編み終わりではなく脚の向きに合わせてお腹を編むという荒技の結果、だいたいまっすぐな感じに。これだとわた詰めたときにお腹が歪むよね…という不安は残りますが。

上半身と下半身、端にぐるっと1段細編みを編むので、合体は細編み同士を拾ってとじていくだけです。ここが簡単なのは良い!とじ合わせる前に、頭と尻尾、脚にはしっかりわたを詰めておくようにしてください。


最後にお顔をつけました。

こんな感じで歪んでしまうので、パターン中に指示のある、編みながらつけていく顔パーツガイドは無視しちゃっても良いと思います。あとで完成写真をみながら、好きなバランスで顔をつけていけば良いんじゃないかな。

さてどのくらい歪んだ?

ご覧いただける通り、頭は左に曲がっています。ボディも右肩が少し出ていて、全体的にゆるーいS字を描いている感じに。わた詰めでバランスをとってはみたものの、完全にまっすぐにはなりませんでした。


ですが、横から見るとこんな感じ。ほとんど気になりません。編んでいる間はちょっと不安になるかもしれませんが、意外とできあがりは大丈夫そうです。


おまけでうちの犬(の脚)とのツーショット。リアル犬もわりとまっすぐ立ってないものですし、まあこのくらいのほうがよりリアルかもしれませんw

というわけでとってもカワイイ「Gus the Labrador Puppy」のパターンでした。編み終わった作品どうしようかなー、と思いながら実家で最後の仕上げをしていたら、母に「欲しい」と言われたのでそのまま里子に出してきました。
とにかくきっちりと、しっかり形が出るようにきつめに編みましょう。歪みは気にしない!きっとカワイイ子が生まれるはずです。

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ちなみに「ひっぽとあぱま」は、「もりのへなそうる」ネタです。小学校一年生か二年生のときに読書感想文を書いたので、夏になると思い出しちゃう。


(こちらも残念ながら画像はアフィリエイトです)

コメント

  1. […] しかも、胸ビレ・背ビレ・しっぽにはワタを詰めないので、大きい胴体の部分にえいやっとワタを詰めるだけです。 あみぐるみって、意外と「編み」だけじゃなく、「ワタ詰め」の技術でも出来上がりに差が出るんですよね。 前回編んだStuff The Bodyさんのこいぬとかはまさにワタ詰めで大きく差が出る作品だと思います。 […]

  2. […] が、よくよく思い出してみれば、以前パターンレビューしたStufftheBodyさんのGusや、LalylalaさんのCarlなども、編みながら目をつける指示があったんでした。完全に読み飛ばしていました。 […]

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