ものづくり全般で役に立ちそうなハンドブックを見つけたので、メモがてらご紹介します。
「デザイナー・中小企業のためのデザイン契約のポイント」という、近畿経済産業局 知的財産室が発行した冊子。PDFが配布されています。
http://www.kansai.meti.go.jp/2tokkyo/02shiensaku/guide/2017design_houkoku.pdf
「デザイン開発」「意匠権」「契約」などというと、ハンドメイド作家さんでは「あまり関係ないかな…」と思われる方もいらっしゃるかも。
でも、ひとりで全てをこなしているならまだしも、第三者と関わる際には知っておいて損はない知識だと思います。とくに、レシピなどを出版社に提供する際には、全てのやり取りに先立つ契約がとても大切だと、まわりの作家さんや弁護士さんのお話を聞いてよく思います。
「デザインというと、著作権で守られると思いがちです。製品のスケッチ画 や見本・模型は著作権で守られますが、量産される工業製品のデザインや PCのソフトェアやスマートフォンのアプリケーションの画像デザインは、 著作権では守られません。 これらの工業製品のデザインやソフトウェアやアプリケーションの画像デ ザインは意匠権で保護し、製品につけるマーク等のデザインは、商標権で保 護しておくことが大切です。 また、不正競争防止法でも守ることができますが、模倣品や類似品が発生 した後に裁判等を行うことになりますので、事後対策しかできません。」(P10より、原文ママ)
ハンドメイド作品自体が「量産される工業製品」と見なされることはあまりないでしょうが、出版物に掲載されたものなどは上記に書かれている「デザイン」に近いかもしれません。
編み物の世界でもデザインの模倣に関する裁判が過去にあったそうで、以前ネットに転がっている判決を読んだりしたことがあります。(判決は棄却で原告敗訴。)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/904/081904_hanrei.pdf
最終的に知財高裁まで行ったようで、判例解説がありました。ふたつご紹介しておきます。
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201605_17.pdf
https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201306/jpaapatent201306_106-135.pdf
この裁判では模倣された編み図が著作物に該当するか(著作権が侵害されたか)どうか、ということが争われて、その訴えが退けられるという形になっています。
以前いろいろ(頑張って)検索した結果、この裁判で争われた編み物の画像なども出てきました。編み物をしている側から見ると、原告と被告の作品は似ているなと思った記憶があります。しかし原告の編み図は著作物ではないと。そして、特許や意匠権などを取得していない限り、ほかに作品を保護する手立てはないということですね。裁判で争うとなると、なかなか厳しいものだなと思わされました。
さて、話が戻りますが、今回の冊子は専門家のコラムも充実していますし、興味のあるところから拾い読みするもよし、とりあえず全部通して読んでみるもよし、だと思います。
巻末には「デザイン活用とデザイン契約のお役立ちサイト」としてリンク集も掲載されています。お仕事が外部からきた!というときのために、そんなことはなくても作家さんが自分らしく、のびのびと活動していくためにもきっと役に立つと思います。
ちなみに、なんかえらそうにごちゃごちゃ書いていますが、私自身は知財にかんしてはまったくの素人です。
もし何かお困りのことに直面していらっしゃる方がこの記事をお読みになることももしかしたらあるかも…と思いまして、相談先としてわたしのおすすめの団体をご紹介しておきますね。
「Arts and Law」(http://www.arts-law.org/)というNPOは、アーティスト・クリエイターなどの活動をサポートしている団体です。弁護士・公認会計士・行政書士・司法書士など、いわゆる「士業」の専門家が所属・運営しています。原則として相談は無料。
実際に相談して、1回では解決できないような問題だった場合は、改めて有料で依頼を仕切り直すという形になります。わたし個人の知人・友人も複数所属していて、信頼できる団体ですので、相談先としてご検討ください。
ほかにも、各都道府県に設置されている法テラス(http://www.houterasu.or.jp/index.html)なども、まずは無料で利用できます。
こういうまとまった情報がインターネットでどこからでも手に入るようになったのはやはりありがたいですね。いい時代になったと思います。
というわけで簡単なご紹介でした。
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